余白が大切

私が印刷会社に入社した頃、研修でまず教わったのが「余白の大切さ」でした。印刷物には必ず余白をつくります。印刷される部分の外側に、印刷機が紙を送るためのスペースを残したり、「断ち落とし」という工程で印刷物を断裁する位置などを指示したりします。次の人が仕事をしやすいように未来に余白を残すのです。

私が所属した企画部は、印刷物などの広告にストーリーをつくることが主な仕事。お客様の課題解決のために広告全体の企画立案を行い、制作物のアイデアを社内のデザイナーへ伝えることが役割でした。

企画の仕事で誰もがまず陥る失敗は「企画を作り込みすぎる」ということです。特に仕事を覚えたての頃は、自分の企画が広告物として形になるのが嬉しくて、完璧な指示をデザイナーに押し付けようとします。「僕が考えた企画をこの通りデザインして下さい!」と。

そのようにしてできあがった広告デザインは、確かに自分が指示した通りなのですが、自分の小さな頭で考えたイメージを決して超えることはなく、味気のない仕上がりとなります。そこにデザイナーの技術や、お客様の情熱が入る余白が一切ないからです。

失敗を重ね経験を積むと、企画に余白をつくれるようになります。企画とはアウトラインであり、ストーリーづくり。それ以上のことはあえて余白として残し、自分の手から離す。デザイナーやお客様がその余白を補完して、広告物はより完成度の高い媒体へと自ら成長するのです。

余白とは、自分以外の誰かの未来を想像すること。そのことを肝に銘じてからは仕事がうまくいくようになりました。

私は文章を書く時にも完璧なものを書こうとするのではなく、誰かの未来を想像しながら、そっと余白を残すように心がけています。読む人が各々の受け取り方で、その時の感情を加えて完成する。不完全こそが心地よい文章なのだと思います。

余白とは誰かの未来を想いやること。