知的トレーニングの技術

この本は私の先生であり教科書です。広告企画の仕事をしていた時に、カバンに入れていつも持ち歩いていました。表紙は破れ、よく参照するページはすっかり私の手の形になっています。ことある毎にページをめくり長年かけて読み込んできた大好きな本です。

色々と本を読んでいると、稀に「古いのに古くない本」に出会うことがあります。それがこの本です。私が持っているのは文庫版の第八刷ですが、初版は今から45年前の1980年と記載があります。とても古い本です。なのに内容は全く古く感じないのです。それどころか読み込むほどに新しい学びがあります。この先も古くなることのない普遍的な本なのでしょう。

この本は、よくある知的生産に関するビジネス書の域を遥かに超越しています。私にとってハウツー本の元祖と言ってもいいと思いますが、後発の本は恐らくこの本を超えられないでしょう。

その解説は、思考や読み書きの具体的方法論にとどまらず、気分管理術や知的空間の作り方など、独学を志す人の誰しもが必ずぶつかる課題に対して、この上なく丁寧にケアしてくれています。特に私がこの本の魅力だと思う点は、お節介とまで言いたくなるほどの読み手を先回りした親切さ。こちらがまだ悩む前に、悩みの種を消しにかかってきます。

何よりも著者の文章表現自体が非常に豊かで奥深く、今まで何度真似ようと試みて未熟を突き付けられたことか。色々と挙げればきりがないですが、ため息が出るほど私はこの本が好きだなあ。という…。

最後の章には、これでもかと言わんばかりのダメ押しとして、「発想法カタログ」と題した、夏目漱石やフロイトといった巨匠たちの思考術がまとめられているのです。これはもはや、お節介の極みです。スマイルズの『自助論』さえ連想させる情熱的な偉人伝が、ほんの附票のごとく巻末に添付されているのです。こんなお得な本はないと思います!

知的生産術を学びたければ百冊のハウツー本を買うよりこの一冊をボロボロになるまで読み込むことをお勧めします。

書籍情報

『知的トレーニングの技術(完全独習版)』花村太郎(ちくま学芸文庫)