増やしながら減らす

会社員の頃、平日はオフィスでバリバリ仕事をし、週末は趣味のキャンプに出かけていくという生活を楽しんでいた時期がありました。

私にとってのキャンプの楽しみは二つあります。一つは「ひとりの時間」。キャンプ地に着きテントを張った後は、あえて何もしません。めまぐるしい日常の対角にある静かな時間を大自然の中で過ごすことによって心を保っていました。

もう一つの楽しみは、「道具を愛でる」こと。モノが好きな私は、キャンプ道具のような機能性のあるギアが大好物。社会人になって自由に使えるお金を持つと、あれもこれも揃えたい物欲が爆発し、どんどん道具が増えていきます。火を付ける道具、食事をする器、道具を収納する道具…。同じ用途の道具を複数持っていたり、新商品が出るとまた欲しくなったり。

道具が増えていくにつれて、静かな時間を楽しむ方がおろそかになってきます。テントを張った後は、火を起こして、食事をして、道具を出したりしまったり。何もしないはずのキャンプが気がつくと何かと忙しかったのです。

そして私は道具を減らすことにしました。所有物を手放すのではなく、その都度、持って出かける道具を厳選します。どのくらい減らすかというと、背中に背負えるくらいまで。バックパッキングの技術を学び、必要最小限の荷物でキャンプに出かけるということをやってみました。

何を持っていくべきかと想像しながら選んでいく、出発前夜の時間もさらに楽しくなります。(むしろ今ではそちらが楽しい?)

厳選した道具にはより一層の愛着が湧き、何もしない静かな時間も取り戻せたのです。どちらの楽しみも両立することができ、キャンプがもっと好きになりました。

さて非日常のキャンプに限らず、私たちの日常はまさにこの繰り返しではないでしょうか。多様な情報や出会いに溢れた現代社会。何を選ぶかということが重要になってきます。そして同時に、何を選ばないかということがさらに重要になってきます。

知識や情報、出会いは増えれば増えるだけ経験を豊かにし、人格を深くしてくれる反面、時間を奪い私たちを忙しくします。物事を複雑にし、わかりづらくさせます。

無意識に増やしすぎるのではなく、しかし減らしすぎるのでもなく、増やしながら減らす。ミニマリストの考え方とは少し違います。

より多くのものを持ち、その中で自分の人生に何を持ち歩くのか定期的に厳選していく。そのような考え方が上手な心の守り方なのだと思います。

集めた道具の中から厳選して何を持ち歩くか決める。