お祝いの腕時計

私が自分の牧場をはじめた時に母がお祝いに買ってくれた腕時計。フルメタルのG-SHOCK。研修を頑張って目標達成したご褒美だと母は言ってくれました。その母は3ヶ月後に他界しました。母からの最後のプレゼントでした。

お祝いに何か買ってあげたいと。何が欲しいかと母に聞かれて、私は心のなかで「永遠」と答えました。末期がんの母と過ごす時間が、残り僅かなのがわかっていたからです。

私は「母との永遠の時」を身に着けたいと思いました。腕時計が欲しいと言うと母は、身につけるものをプレゼントすることを戸惑いました。自分の存在に縛られてほしくないと考えたようです。しかし私は縛られたかった。

大切に保管するのではなく普段遣いで、気取らなく、堅牢な腕時計が欲しかった。今までと同じように、これからも、いつもそばにいてほしかったから。

「永遠の時」の条件は、電池切れのないソーラー式と、常に正確な時を刻む電波時計。そしてこわれないこと。母と過ごしたあの時から片時も途切れることなく動いている橋渡しの腕時計。

母には感じ取られたくなかったけれど、心のどこかで母との思い出をつくろうとしていた私。その思いを寂しく感じ取りながらも、私の要望を受け入れこの腕時計をプレゼントしてくれた母。双方の複雑な思いが、左腕にずっしりとした重みとなって、永遠の時を刻みます。

私の一番の宝物です。