私は写真を撮る時に、ついつい画角に余白を意識してしまいます。これは印刷会社時代に体に刷り込まれた、いわば職業病なのです。
印刷物に掲載する写真の使用用途は大きく分けて二種類あります。印刷用語で「型抜(カタヌキ)」といわれる使い方と「角版(カクハン)」という使い方です。
カタヌキはその名の通り、被写体の形をくり抜いて使います。商品や人物など、輪郭がはっきりとしている被写体を際立たせて見せたい場合に多く用いる手法で、印刷物のデザインにメリハリをつけ、ポップな印象に仕上がるのが特徴です。
カタヌキ用のリンゴを撮影する場合、リンゴのふち取りがくっきりと識別できるように、他の線が重ならないよう用心し、周りにはなるべく無機質な余白をつくります。赤い輪郭が際立つよう背景は白などコントラストがはっきりした色を選ぶとカタヌキ作業がしやすいです。
一方カクハンはよくあるスナップ写真のように背景を含めて、四角い枠の写真として使います。風景写真やイメージ写真などに多く、情景や雰囲気など、写真全体からストーリーが伝わりやすいのが特徴です。
カクハン用のリンゴを撮影する場合、たとえば木に実った状態を撮影することで、生命力が伝わります。さらに農園の雰囲気が伝わる画角で撮影することでリンゴという被写体にストーリーを加えることができるのです。
応用編ですが、あえて広く余白をとることで、背景の上にキャッチコピーの文字をデザインすることもできます。さらに、わざと画角から被写体がはみ出すように撮影し、見えない部分を想像させるというテクニックもあります。リンゴの詰め合わせ箱などを撮影する際はこの手法を用いて、箱にリンゴがたくさん入っているように想像させます。
カタヌキとカクハン。どちらの写真も撮影する際、大切なのは余白です。
無意識に撮影すると、つい被写体にグッと寄りたくなります。被写体を主人公にして、画角に大きく入れたくなってしまうのです。そこをどれだけ我慢できるかです。
またカメラの向きを変えて必ず複数枚撮影することも必要です。縦型の写真と横型の写真、デザインの都合上どちらがぴたりと当てはまるかは、デザインを作成してみないとわからないからです。使える写真がないのでもう一度撮影してきてください、というのはプロとして最悪な仕事です。
このように次のデザイン工程や使用用途を想像する余白を心にもつことで、印刷物の出来栄えは格段に変わるのです。
