手仕事の感覚

子牛に与えるミルクは温度管理がデリケートです。一定の温度で与えなければ免疫力の弱い子牛はすぐに病気になってしまいます。いつも同じということが大切なのです。

私の牧場では、母牛の体温より少し高い41度に決めています。バケツに熱湯を張り、そこにミルクボトルを浸して温めます。

温度が41度になったかどうかを計るのは、デジタル温度計の仕事です。ところが今日、その温度計が壊れてしまいました。表示温度が異常に高くなってしまうのです。

そのような時こそ自分の手の感覚が重要です。常日頃から温度計に頼るだけではなく、毎日自分の手でミルクに触れ温度を感じていました。いつもと同じかどうかは指先が覚えていたのです。

意図せずデジタル機器が壊れて初めて、手仕事の感覚の重要性を再認識することになりました。

たとえば搾乳作業の際も、牛に毎日触れていることで、その牛の小さな体調の変化に気がつくことができます。

多岐にわたる仕事を順序よく処理していく多忙の中で、いちいち手で触れるというのは面倒なものです。一見すると非効率で昔ながらのやり方に感じますが、最後に自分を守るのは自らの手だということも忘れてはなりません。

日進月歩で機械仕事の幅も広がり非常に便利な昨今ですが、自分の手で触れるという仕事の基本をこれからも大切に守りたいと思います。

指先の感覚が、ほんの些細な変化を捉える。